新築やリノベーションを建築家・設計事務所に依頼している方の中には、「庭も一緒にお願いできるのでは」と考える方もいます。実際には、建築家と庭師(造園家)は専門領域が異なり、連携の仕方によって仕上がりが大きく変わります。
この記事では、建築設計と庭園設計の連携で押さえておきたいポイントを詳しく解説します。
建築家と庭師(造園家)の役割の違い

| 専門家 | 専門領域 | 庭に関する対応範囲 |
|---|---|---|
| 建築家・設計事務所 | 建物の設計・構造・意匠 | 外構・植栽の基本的な提案は可能だが、日本庭園の様式や石組みなどの専門技術は範囲外のことが多い |
| 庭師・造園家 | 庭の設計・施工・植栽 | 庭に特化した専門技術を持つが、建物の構造や設計図面まで踏み込むことは通常ない |
建築家は建物全体の意匠や構造、法規制への対応を専門としており、庭についても外構の一部としての提案は可能ですが、樹木の生育環境や石組みの技術といった造園固有の専門知識は庭師(造園家)の領域であることが多いのが実情です。
両者の専門性は重なる部分もありながら本質的には異なるため、どちらか一方に任せきりにするのではなく、それぞれの強みを活かす分担を意識することが望ましいといえます。
設計事務所に相談する際は、庭に関する相談実績や連携している造園会社の有無を最初に確認しておくと、後の進め方をイメージしやすくなります。
構造や法規制の知識は建築家に、庭木の生育や石の据え方は庭師に、それぞれの専門性を尊重する姿勢が良い庭づくりの基盤になります。
建築家に庭も一括で依頼する場合の注意点

建築家によっては、提携する造園会社と組んで外構まで一括提案してくれるケースもあります。ただし、その造園会社が日本庭園を得意としているとは限りません。「和風の外構」レベルの提案にとどまり、本格的な様式を求める場合には物足りなさを感じることもあります。事前に、提携先の造園会社の日本庭園における実績を確認しておくことをおすすめします。
設計事務所によっては提携する造園会社を持っている場合もありますが、その造園会社が日本庭園を専門としているとは限らないため、過去の施工実績を必ず確認することをおすすめします。
一括依頼の最大のメリットは窓口が一つで済む点ですが、庭の完成度そのものにこだわりたい場合は、造園専門の担当者が実際にどこまで関わるのかを事前に確認しておくと安心です。
契約前に過去の施工事例の写真を見せてもらい、自分がイメージする庭のスタイルと合っているかを確認することも大切です。
建築家と庭師、両方に依頼する場合の注意点
建物の設計と庭の設計を別々の専門家に依頼する場合、両者の連携が取れていないと、窓の位置と庭の見せ場がずれてしまったり、配管計画と庭の設計がかみ合わなかったりすることがあります。早い段階で両者が情報を共有できる体制を作ることが重要です。詳しくは新築で日本庭園を作りたい方への記事もあわせてご覧ください。
窓の位置や高さは庭の見え方を大きく左右するため、建物の設計段階から庭師が意見を出せる体制を作ることで、完成後に「思っていた景色と違う」という食い違いを防ぎやすくなります。
別々に依頼する場合、双方の連絡や調整を誰が担うのかを最初に決めておかないと、施主自身が板挟みになって疲弊してしまうこともあるため注意が必要です。
契約自体は別々でも、定例会議を共同で設定するなど、情報共有の仕組みだけは一本化しておくことをおすすめします。
連携がうまくいくための具体的な工夫
三者での打ち合わせの場を設ける
施主・建築家・庭師の三者が同席する打ち合わせを、設計の早い段階で一度でも設けることで、認識のズレを大幅に減らせます。
施主・建築家・庭師の三者が同じ場で図面を見ながら話し合うことで、後工程での手戻りを防ぎ、全体としてまとまりのある仕上がりにつながります。
オンライン会議を活用すれば、遠方の庭師とも定期的に打ち合わせを重ねやすくなり、スケジュール調整の負担も軽減できます。
議事録を都度共有し、決定事項を明文化しておくことも、後々の認識違いを防ぐうえで有効です。
図面の共有
建築の平面図・立面図を庭師と共有し、庭の設計図を建築家と共有するなど、双方向の情報共有を意識的に行うことが重要です。
配管やエアコンの室外機の位置など、建築側の設備計画は庭の設計に直接影響するため、早い段階での図面共有が欠かせません。
3Dパースや模型を使って完成イメージを共有すると、施主・建築家・庭師の間での認識のずれを減らすことができます。
施工が始まってからの図面変更は費用がかさむため、着工前の段階で細部までしっかり詰めておくことが望ましいです。
窓・開口部の位置の調整
庭の見どころとなる石組みや植栽の位置に合わせて、建物の窓の位置や高さを調整できると、より一体感のある仕上がりになります。
リビングの掃き出し窓から見える景色を意識して庭の見どころを配置するなど、建物の中からの眺めを前提とした設計が満足度を大きく左右します。
和室の障子越しに見える庭の景色など、室内からの見え方を意識した設計は、建築側との綿密なすり合わせがあってこそ実現します。
依頼のタイミングと予算配分の考え方
新築の場合、建物本体の予算を先に確定させてから庭にまわせる予算を検討するケースが多く見られますが、その結果として庭の予算が大きく削られてしまうことも少なくありません。
理想としては、建築の基本設計の段階で庭にかける予算をある程度確保しておき、建物と庭を一体の計画として進めることで、どちらかにしわ寄せが行くことを防ぎやすくなります。
依頼のタイミングとしては、建物の基本設計が固まる前、間取りの大枠が見えてきた段階で庭師に相談を始めるのが理想的です。着工直前になってから庭のことを考え始めると、選べる選択肢が限られてしまいます。
見積もりの段階では、建物本体・外構・庭園を分けて金額を出してもらうことで、それぞれの予算感を把握しやすくなり、後からの調整もしやすくなります。
複数の造園会社から見積もりを取り比較検討する際は、庭園プロデュースのように第三者の視点で調整してくれるサービスを活用するのも一つの方法です。
追加工事が発生しやすい庭まわりだからこそ、あらかじめ予備費を確保しておくことも安心につながります。
早期の相談は費用が発生しないことも多いため、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。
両者をつなぐ「庭園プロデュース」という役割

建築家と庭師、それぞれの専門性を活かしながら、庭の視点を建物の設計に反映させ、逆に建物の構造的な制約を庭師に伝える——この橋渡し役を担うのが庭園プロデュースです。建築家がすでに決まっている場合でも、庭の専門家として途中から連携に加わることができます。
建築家と庭師それぞれの専門性を理解したうえで、早い段階から連携できる体制を整えることが、建物と庭が調和した満足度の高い住まいづくりにつながります。
専門知識を持たない施主に代わって、建築家・庭師双方の言葉を翻訳しながら調整役を担ってくれる存在は、初めて家づくりをする方にとって心強い味方になります。
まとめ
建築家と庭師は専門領域が異なるため、庭も一括で任せられるとは限りません。両者がうまく連携できる体制を早い段階から整えることが、建物と庭が調和した仕上がりへの近道です。


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