年齢を重ねても庭を楽しみ続けられるように——バリアフリーの視点を取り入れた日本庭園づくりが、個人邸・施設を問わず注目されています。若いうちに設計した庭も、年月とともに使いやすさへの要望が変わっていくものです。この記事では、バリアフリーを意識した設計のポイントを詳しく紹介します。
園路の段差をなくす

飛石は日本庭園らしい意匠ですが、つまずきの原因にもなります。段差の少ない平坦な園路や、手すりを併設した通路を組み合わせることで、安全性を高められます。
すべての飛石をなくす必要はなく、鑑賞用のエリアと日常の動線を分けて設計する方法もあります。よく使う経路だけを平坦に仕上げ、庭の趣を感じさせたい部分には飛石を残すといったバランスの取り方が可能です。
やむを得ず段差が生じる場所には、スロープを併設する方法もあります。勾配は緩やかにするほど負担が少なくなるため、設置スペースに余裕を持たせた計画が望ましいでしょう。
既存の庭を改修する場合は、飛石をすべて撤去するのではなく、上に薄いモルタルやタイルを重ねて段差を解消する方法もあります。既存の石組みの雰囲気を残しながら、安全性を高めることができます。
雨天時は路面が滑りやすくなるため、水はけの良い素材や勾配の工夫も、段差解消とあわせて検討しておきたいポイントです。
車椅子でも通れる幅を確保する

園路の幅を車椅子が通れる程度に確保しておくことで、将来的な利用のしやすさが変わります。設計段階での配慮が重要です。
一般的に車椅子が余裕を持って通行できる幅は90cm以上とされています。すれ違いが必要な場所では、さらに広い幅を確保するか、部分的に待避スペースを設けるとよいでしょう。
園路の素材選びも重要です。タイルや天然石など、表面が滑りにくく、車椅子の車輪が引っかかりにくい素材を選ぶことで、より安全に通行しやすくなります。
門扉やアプローチの出入り口も、車椅子や歩行器がスムーズに通過できる幅と、開閉のしやすさを確認しておくとよいでしょう。引き戸タイプの門扉は、開閉スペースを取らずに済むため検討する価値があります。
園路の分岐点や方向転換が必要な場所には、車椅子が無理なく回転できる広さのスペースを確保しておくと、通行がスムーズになります。
座って楽しめる場所を作る
ベンチや縁側など、腰を下ろして庭を眺められる場所があると、長時間庭に滞在しやすくなります。日陰と日向のバランスも考慮しましょう。詳しくは「縁側・掃き出し窓から楽しむ庭の設計」の記事もあわせてご覧ください。
立ち座りのしやすさを考えると、ひじ掛けや背もたれのあるベンチが安心です。設置場所は、園路からのアクセスのしやすさとあわせて検討するとよいでしょう。
休憩スペースの近くに、杖や車椅子を一時的に置けるスペースを確保しておくと、より使いやすくなります。手すり付きの立ち上がりやすいベンチを選ぶという工夫も効果的です。
庭の複数箇所に休憩スペースを分散させておくと、長い距離を歩かずに休みながら庭を楽しむことができます。特に広い庭では、動線の途中に適度な間隔でベンチを配置する計画が有効です。
素材の質感にもこだわると、真夏や真冬でも座りやすいベンチになります。石やコンクリートよりも、木製やクッション性のある素材の方が快適に過ごせます。
高齢者施設での需要も高まっている
個人邸だけでなく、高齢者施設においてもバリアフリーの庭園ニーズは高まっています。詳しくは「高齢者施設・老人ホームの日本庭園づくり」の記事もご覧ください。
施設の庭園は、入居者の方が日常的にリハビリや散歩で利用することも多いため、個人邸以上に段差の解消や手すりの設置が重視されます。園芸療法の場として活用されるケースも増えています。
施設の庭園では、季節ごとの花や紅葉を楽しめる植栽計画も重視されます。天候に左右されずに庭を眺められるよう、屋根付きの休憩スペースを設けるケースも増えています。
車椅子利用者と歩行者が同じ園路を安全にすれ違えるよう、幅員や曲がり角の形状にも配慮が必要です。施設向けの庭園設計では、こうした運用面の細かな配慮が特に重視されます。
入居者だけでなく、面会に訪れるご家族にとっても心地よく過ごせる庭であることは、施設選びの決め手の一つになることもあります。
将来を見据えた設計という考え方
現在は必要なくても、将来的な加齢や介護の可能性を見据えて、あらかじめバリアフリー設計を取り入れておくという考え方もあります。後から改修するよりも、初期設計に組み込む方が結果的にコストを抑えられることもあります。
例えば、園路の下地をあらかじめ手すりの設置に対応できる構造にしておけば、必要になった際にスムーズに追加工事ができます。将来の変化を見越した「余白のある設計」は、長く住み続ける住まいほど価値を発揮します。
手すりの設置予定箇所には、あらかじめ下地となる補強材を壁や柱に入れておくと、実際に必要になったタイミングで工事の手間を抑えられます。設計段階で庭師に将来の計画を伝えておくとよいでしょう。
植栽計画も将来を見据えて考えることができます。手入れの負担が大きい植栽を減らし、比較的管理のしやすい樹種を中心にすることで、加齢後も無理なく庭を維持しやすくなります。
ZenGardenのサポート

バリアフリーを意識した庭づくりについて、無料相談でご相談ください。
現在のご家族の状況や将来の見通しに応じて、必要な配慮のレベルをご提案します。既存のお庭の部分的なバリアフリー改修についても、お気軽にご相談ください。
ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も承っています。同居のご家族が離れて暮らすご両親の家をリフォームする際の庭づくりについても、実績のある庭師をご紹介できます。
既存のお庭を見せていただきながら、優先的に手を加えるべき箇所を一緒に整理していくことも可能です。ご予算やスケジュールに合わせた進め方をご提案します。
照明・音による安全対策
視力や聴力の変化を見据え、園路を明るく照らす照明計画も重要な要素です。人感センサー付きの照明であれば、夜間のトイレ利用などの短い移動でも安全に庭を通ることができます。
砂利を敷いたエリアでは足音が響くため、来訪や外出のタイミングが分かりやすいというメリットもあります。安全性とちょっとした見守りの機能を兼ね備えた工夫として活用できます。
足元を照らす低い位置の照明(フットライト)は、まぶしさを抑えながら段差や園路の輪郭を分かりやすく照らすことができ、高齢の方の夜間移動に適しています。
停電時にも最低限の明かりを確保できるよう、ソーラー式や充電式の補助照明を併用しておくと、災害時の安全性も高まります。
まとめ
バリアフリーの日本庭園は、段差の解消、通路幅の確保、座って楽しめる場所の設計がポイントです。年齢を重ねても長く楽しめる庭を目指しましょう。
今の暮らしだけでなく、将来の暮らし方まで見据えた庭づくりについて、まずは無料相談でご相談ください。
一度に大掛かりな改修をするのではなく、優先度の高い箇所から少しずつバリアフリー化を進めるという選択肢もあります。無理のない範囲で、長く安心して楽しめる庭を目指しましょう。
庭は年齢を重ねても長く付き合っていく場所です。今の使いやすさだけでなく、これからの暮らし方も見据えて設計しておくことをおすすめします。


コメント